――お客さんと、彫るまでにどういう過程がありますか?
基本的に一回目は、打ち合わせだね。来てその場で彫るって事はない。一回連絡を取ったら、まず仕事場に呼ぶんですよ。それにどんな意図があるのか、俺も正直今やりながら探してる途中なんですけど、やっぱり彫師の人間性を見せてるんじゃないんですかね。変な話、死ぬまでの付き合いになるかもしれない人だから。なのでいきなり彫るって事はしないですね。
――ファッションを学んでいた時もあったと伺いましたが、ファッションと刺青で関係することはありますか?
俺の中の究極のファッションって、男なんて見た目じゃなくて結局中身。白Tとデニム履いてカッコ良ければそれでいいのね。俺は見た目もこんなんだから、白Tにデニム着て、原宿歩いていても誰にも勝てない。どうやったら俺は勝てるかなって思った時、刺青入れちゃえばいいんだ!俺の中で刺青は服だ!ってなった。まぁ服って言ったら軽いけど、服やってた時の感覚でいうと俺の中で一番カッコイイ服なの。どんどん削げ落としていった。裸で勝負した時に刺青入れてたらかっけぇなって気持ちがあった。
――刺青に対して偏見を抱いてる人が少なからず居ると思いますが、彫師をしている方からするとどう感じていますか?
最近の話をすると、日本って独特じゃないですか。海外なんて刺青を当たり前に受け入れられるのに、日本って未だにプールも温泉もダメだったりするじゃないですか。それで良いとずっと思ってたんですよ。その偏見が刺青の価値だったんです。例えば、「入れたくても親が〜。」「仕事が〜。」「周りの目が〜。」って言ってる人沢山居るじゃないですか。でも入れてる人って多分、それでも生きていける立場を自分で作っていると思う。俺は小さい頃に銭湯で見た刺青を未だに覚えているんです。多分そうゆう衝撃って海外の人は味わえないし。かといって20代の俺がこれを言ってるのは古いのかなって気もしてて。だから最近考え方が少しずつ変わってきてる。俺はずっと刺青は隠す美学だと思っていて。刺青は自分の女と銭湯でしか見せない!って決め事があったんですけど、最近は、出してもいいかなって気にもなってきていて。もちろんシーンとか場所は選ぶんですけど。今までの偏見が逆に俺は良かったし、それでいいと思ってたけど、今は考え直している途中ですかね。偏見がなくなったらなくなったで、その時はその時で面白い世界があるのかなって。
――これを誰に発信したいですか?
今までは、アンテナに引っかかる人にだけ引っかかればいいなって思っていたけど、今は全然違う角度の人に届いたら、もっと面白い事が生まれるのかなって気もしちゃってて。ちょっと考え方が変わってきているのかな。刺青やってる人は、ヤクザ上がり、暴走族上がりとか不良ばっかだけど、俺は業界の中ではちょっと特殊で。スケーターもやってたし、服も学んでたし、バックパッカーもやったし、色んなカルチャーを他の彫師よりは知ってるつもりなのよ。そうなった時に、他の彫師には出来ない事出来るんじゃないかって気もしてて。えっと、誰に発信したいか?だったか。そしたら俺あれだ……。100年後の世界だわ (笑)。誰かが繋げていかないと残らないじゃない。少なくとも、江戸時代からやってきた事を今受け継いでるわけだから。それが100年後に残っていたらいいなって思う。都市伝説とかで、バーチャルの世界に移行するとか色々あるじゃん。でもそうゆうのも全部取っ払って、今ある同じ事を、100年後も続いていたら俺は嬉しいかな。
――今度の目標とかはありますか?
まず、大前提として、日本で一番凄い刺青師になる。っていう心構えはあるんですけど。でも、刺青師だけに留まらず、刺青師っていう基盤で色んな関わり方出来たらいいなっとは思いますけどね。後は、ひたすら彫る!
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