【Profile】
Helena Margrét Jónsdóttirは、アイスランドのレイキャビクを拠点に活動するビジュアルアーティスト。レイキャビク視覚芸術学校、デンハーグ王立芸術アカデミーでファインアートを学び、2019年にアイスランド芸術大学を卒業。
これまでの展覧会には、Kjarvalsstaðirでの「What it seems」、ミラノのPlan X Art Galleryでの「Social Distancing」、マイアミでの「Untitled Art Fair」などがあります。2021年1月には、初の個展がレイキャビクのHverfisgalleríで開催される。
――いつから始めましたか?
美術の勉強を始めたのは、6歳の時です。放課後のプログラムのようなものでした。
その後は、イギリスロンドンにある ロイヤルアカデミーオブアートのAPI大学に1年半通いました。アイスランドの芸術大学も2019年に卒業しています。
子供の頃は、アーティストになることは現実的な仕事ではないと思っていました。お姫様になりたいと思っているようなものですかね。ワクワクするけど、現実的ではない、そんな感じです。だから今このような仕事ができるのは本当にラッキーだと思います。
母は、絵の他にバレエにも連れて行ってくれたのですが、うまくいかなかったんです。
だから、美術のプログラムに行ったのは、全ての始まりでしたね。
――現在居るのはアトリエですか?
そうです。小さいですが4階にあるので眺めは良いですよ。 でも、先週かなり大きな地震があったんです。全ての作品がここにあるのでとても心配だったんですが、とりあえず大丈夫でした (笑) 。
――作品のテーマやスタイルについて教えてください。
スタイルでいうと、デジタル・アブストラクトとリアリズムを組み合わせた作品っていう表現がベストかな、と思います。私は、Photoshopを使って作業をしているんです。でも、デジタルで作品を作る場合は、アナログなスケッチを作品の中に組み込むようにしています。デジタルだと色んな種類のギャップやコントラストが感じられず、同じように映し出されてしまって、リアルなタッチが伝わらないんです。なので、画像を追加したり、様々な種類のテクスチャを加えています。
キャンバスに描きだすと、デジタルでは見えなかったディテールが突然見えてきます。なので、油絵のデジタルドローイングやディテールを感じることができるので、素敵なコントラストが出来上がるんです。デジタルのPhotoshopだと1日で絵を完成できるけど、油絵だと最低でも2週間くらいかかるので、それぞれの特徴の違いも面白い点だと思います。
テーマは、何かを欲しがったり、憧れたりするものを描く事が多いですね。
この絵は、腕がワイングラスに手を伸ばしていているのが分かります。きっと、誰もが絵の中の人が手を伸ばそうとしているのは分かると思いますが、絵の中の彼らのやり方では掴み取ることに失敗しているんです。
――後ろにある靴の絵はどんな作品ですか?
この絵は、ナイキの靴を描いている作品ですね。
絵の中の幽霊は靴下を履いていて、靴はシースルーになっています。
そして、その靴の上に、赤いワインがこぼれてきているんです。
あと、少し見づらいかもしれないんですが、私の後ろにある黒と白の絵が見えますか?
この絵とナイキの靴の絵はマッチしているんです。
この絵の中には幽霊がいて、その幽霊が持っているワイングラスの中身はこぼれているんです。後は、幽霊を通り抜けてワインを盗もうとしている人間の手も描いていて、デジタル上での身体性の欠如を表しています。画面上で行うすべてのことには物理的な表現がなく、それは幽霊のようなものであり、神秘的で手の届かないものという思いも込めています。
私は、ナイキの靴は基本的に憧れを表現しているなぁと思うんです。あと、新品のナイキの靴を箱から出したときの感情は憧れや欲に似てると思っています。なので、ナイキの靴をモチーフにして絵を描くことが多いんです。
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